相続の手続きは、市役所、会社、銀行など多くの場所で行わなければならず、専門的な知識が必要な場合もあります。家族だけで全ての手続きを行うのは、多くの時間と労力がかかります。最近よく耳にする「終活」とは、人生の終わりに向けて準備をする活動のことです。これは自分の死後についてだけでなく、残りの人生をどう生きるかを前向きに考えるための活動でもあります。

相続の方法は、 大きく分けて3つあります。

1. 遺言書による相続

遺言書がある場合、基本的にはその内容に従って相続が行われます。遺言書を作成しておくことで、自分の希望通りに財産を渡すことができ、親族間での争いを防ぐことができます。さらに、遺産の名義変更も指定通りに行うため、手続きが簡単になります。ただし、相続人全員が同意すれば、遺言書と異なる分割も可能です。

遺言書には、自筆証書遺言(法務局保管を除く)や秘密証書遺言の場合、家庭裁判所の「検認」が必要です。遺言書を見つけたら開封せずに家庭裁判所に持って行き、「検認済証明書」を受け取ります。

2. 法定相続

法定相続は、法律で決められた割合で遺産を分ける方法です。遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産を分ける方法です。

相続の割合の一例(法定相続分)

  • 配偶者と子の場合:配偶者が2分の1、子が2分の1(子が複数いる場合は人数で等分)
  • 子2人の場合:2分の1ずつ
  • 配偶者と被相続人の親の場合:配偶者が3分の2、親が3分の1(親が2人いる場合はさらに2分の1ずつ)
  • 配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合:配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(兄弟姉妹が複数いる場合は人数で等分)

上記の法定相続分はあくまで目安です。相続人全員の同意があれば、どのように分けても問題ありません。

3. 遺産分割協議による相続

遺産分割協議は、相続人全員で話し合い、誰が何をどれだけ相続するかを決める方法です。全員の同意が必要で、1人でも欠けると無効になります(未成年者の場合は代理人が必要です)。

協議の結果は書類に残し、「遺産分割協議書」として保管します。全員の同意が得られない場合は、裁判(遺産分割調停)に進むこともあります。

遺言書が必要な理由

1. 相続争いを防ぐため

遺言書は法的な効力があり、相続は遺言書の通りに行われるため、不要なトラブルを避けられます。

2. 法定相続人以外にも財産を残せるため

遺言書を残すことで、法定相続人以外の人にも財産を渡すことができます。遺言書がない場合、法定相続人しか財産を受け取る権利がありません。

独り身の場合、遺言書がないと財産は国のものになります。

公正証書遺言とは

公正証書遺言は、公証人に作成してもらう遺言書です。費用はかかりますが、自筆証書遺言よりも公正証書遺言の方がおすすめです。

  • 公証人が関与するため、方式の不備で無効になる恐れがありません。
  • 公証役場で原本を保管するため、紛失や隠蔽の恐れがありません。
  • 相続人が遺言を簡単に発見できます(遺言検索サービス)。
  • 家庭裁判所の検認が不要です。
  • 文字を書けなくても作成できます。

公正証書遺言を作成する手順

  • 公証役場で作成のための打ち合わせを行います。
  • 公証人が遺言の原案を作成します。
  • 遺言者が原案を確認し、必要に応じて修正を依頼します。
  • 原案が確定したら作成日を調整します。
  • 作成日当日、遺言者の本人確認を行い、公証人が遺言の原案を読み上げ、内容に間違いがないか確認します。確認後、遺言者と証人2名が署名捺印し、公証人も署名捺印して完成です。

事前準備の重要性

相続で悩む方の多くは、事前準備をしていない方です。まだ時間がある今のうちに、できることから始めてみませんか?