労働保険とは
労働保険とは、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険を指します。これらの保険給付はそれぞれ別々に行われますが、労災保険料と雇用保険料の支払い手続きなどはまとめて「労働保険料」として扱われます。
労災保険とは
労災保険は、労働者が仕事中や通勤中にケガをしたり病気になったり、または死亡した場合に、被災労働者やその遺族を保護するための国による強制保険です。さらに、労働者の社会復帰を支援するための事業も行っています。
労働者(パートやアルバイトを含む)を1人でも雇えば、事業所は業種・規模に関係なく(個人経営で4人以下の農林水産業を除く)、労災保険に加入しなければなりません。事業主(社長)は労災保険の加入手続きを行い、労働保険の適用事業となることで、毎年労働保険料を納付する義務があります。
労災保険の対象者は、フルタイム、日雇、パート、アルバイト、派遣など、名称や雇用形態に関わらず、賃金を受け取るすべての労働者です。ただし、代表権や業務執行権を持つ役員は労災保険の対象にはなりません。
雇用保険とは
雇用保険は、労働者が失業した場合や出産・育児、介護、老齢による給料の低下などで勤務を続けることが難しくなった場合に、必要な給付を行う国による強制保険です。失業中の労働者の生活を保障し、再就職を促すことや、同じ会社での勤務を続けやすくするための給付を行います。
雇用保険の被保険者は、フルタイム、パート、アルバイト、派遣などの労働者で、週20時間以上働き、31日以上雇用される見込みがある場合に適用されます。平成29年1月1日より、65歳以上の方も雇用保険の被保険者となりました。
株式会社の取締役は原則として雇用保険の被保険者にはなりませんが、取締役で同時に部長や支店長、工場長などの従業員としての立場を有する場合は、雇用関係が認められれば被保険者となります。
委託できる労働保険事務の範囲
①労働保険の申告及び納付事務
② 届の提出等に関する事務
③ 労災保険の特別加入の申請等に関する事務
④ 雇用保険の届出等に関する事務
⑤ その他、労働保険についての申請、届出、報告に関する事務
委託するとこんな利点があります!
メリット
①「労災特別加入制度」により、通常の労災に加入出来ない事業主や家族従事者なども労災加入する事が出来ます。
② 労働保険料の申告・届出など、事務の手間を省けます。
③ 労働保険料の金額にかかわらず、年3回に分割納付出来ます。
④ ハローワークや労働局に行く手間が省けます。
労災保険の特別加入制度とは
労災保険は労働者のための保険ですが、労働者以外でも、その業務内容や災害の発生状況などから労働者に準じると認められる事業主や家族従事者などに対して、労働保険事務組合に事務を委託することで、特別に任意加入を認める制度です。
加入手続きを怠った場合は…
労働保険の加入を怠るとどうなるか
労働保険の加入を怠ると、以下の3つのリスクがあります。
1.
遡って保険料を徴収される
労働保険に加入していない状態で労働者が労災事故に遭った場合、事業主は遡って加入していなかった期間も含めた労働保険料を徴収されます。
2.
労災保険給付の全部または一部を徴収される
労災保険に加入していない状態で労働者が労災事故に遭い、労災保険給付を受けた場合、事業主は労災保険給付金の全部または一部を徴収されます。
3.
行政指導を受ける
労働基準監督署から加入指導を受け、それでも加入手続きを行わない場合は、職権加入となり、上記1・2のリスクに加え、追徴金も徴収される可能性があります。
4.
社会的な責任を問われる
労働保険に加入していないことが原因で労働者が労災事故に遭った場合、事業主は民事上の責任を問われる可能性もあります。
具体例
- 従業員が仕事中にケガをして、治療費に100万円かかった場合、事業主が加入していなかったため、遡って5年間分の保険料に加え、治療費の100万円を支払わなければならなくなります。
- 従業員が仕事中の病気で亡くなり、遺族に1,000万円の遺族年金が支払われた場合、事業主が加入していなかったため、1,000万円全額を支払わなければならなくなります。
まとめ
労働保険に加入することは、事業主の義務です。加入を怠ると、多額の費用を支払わなければならなくなるだけでなく、社会的な責任を問われる可能性もあります。
労働保険未加入の罰則:実例
1. 飲食店経営者が労災保険未加入で罰則
- 概要: 飲食店を経営するA氏は、従業員2人を雇用していましたが、労働保険に加入していませんでした。ある日、従業員B氏が仕事中に転倒して重傷を負い、労災認定されました。A氏は遡って2年間分の保険料に加え、B氏の労災保険給付金の40%を徴収されました。
- ポイント: 故意や重大な過失がなくても、労災保険未加入によって多額の費用を支払わなければならなくなることを示しています。
2. 建設会社が労災保険未加入で罰則
- 概要: 建設会社を経営するB社は、10人以上の従業員を雇用していましたが、労働保険に加入していませんでした。ある日、従業員C氏が仕事中の事故で死亡し、遺族に1,000万円の遺族年金が支払われました。B社は、1,000万円全額に加えて、遡って2年間分の保険料を徴収されました。
- ポイント: 労働災害で死亡した場合、遺族に支払われる労災保険給付金が高額になるため、未加入による罰則も大きくなります。
3. 運送会社が労災保険未加入で罰則
- 概要: 運送会社を経営するC社は、ドライバー5人を雇用していましたが、労働保険に加入していませんでした。ある日、ドライバーD氏が配送中に交通事故を起こして重傷を負い、労災認定されました。C社は遡って2年間分の保険料に加え、D氏の労災保険給付金の20%を徴収されました。
- ポイント: 故意や重大な過失がなくても、労災保険未加入によって多額の費用を支払わなければならなくなることを示しています。
4. 製造業の派遣会社が労災保険未加入で罰則
- 概要: 製造業の派遣会社を経営するD社は、派遣労働者に労働保険を適用していませんでした。ある日、派遣労働者E氏が派遣先で機械に挟まれて重傷を負い、労災認定されました。D社は遡って2年間分の保険料に加え、E氏の労災保険給付金の40%を徴収されました。
- ポイント: 派遣労働者であっても、派遣会社が労働保険に加入していない場合は、派遣会社が罰則を受けることになります。
5. 農家が労災保険未加入で罰則
- 概要: 農家を営むE氏は、家族3人を雇用していましたが、労働保険に加入していませんでした。ある日、家族の一員であるF氏が農作業中にケガをして、労災認定されました。E氏は遡って2年間分の保険料に加え、F氏の労災保険給付金の20%を徴収されました。
- ポイント: 家族従業員であっても、労働保険に加入していない場合は、事業主が罰則を受けることになります。
これらの実例は、ほんの一例です。 労働保険未加入によって、事業主が受ける罰則は、加入していない期間や労働災害の程度によって異なります。労働保険に加入していない場合は、速やかに加入手続きを行うことを強くお勧めします。
労働保険未加入の罰則:実例
雇用保険未加入の場合、法令違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
以下、具体的な罰則実例をご紹介します。
1. 虚偽申請による罰則
- A社は、アルバイト従業員全員を雇用保険に加入させていると虚偽の申請を行い、長期間未加入の状態が続きました。労働基準監督署の調査により発覚し、A社は罰金30万円の処分を受けました。
- B社は、パート従業員を雇用保険の短時間労働者制度の対象者と虚偽に申請し、保険料を免除されていました。しかし、実際には短時間労働者制度の適用要件を満たしていませんでした。労働基準監督署の調査により発覚し、B社は追徴金及び延滞金を含めて数百万円の支払い義務を負いました。
2. 未加入が発覚した場合の罰則
- C社は、アルバイト従業員の雇用保険加入手続きを怠り、未加入のまま雇用していました。労働基準監督署の立ち入り調査により発覚し、C社は罰金10万円の処分を受けました。
- D社は、パート従業員を雇用保険に加入させていましたが、退職後も手続きを怠り、被保険者資格を継続させていました。過誤とはいえ、加入手続きの義務違反として、D社は罰金5万円の処分を受けました。
上記はあくまでも一例であり、実際の処分内容は、未加入の期間、虚偽申請の程度、過去の違反歴などを考慮して決定されます。
雇用保険未加入の注意点
雇用保険未加入は、法令違反となるだけでなく、以下のようなリスクもあります。
- 労働者が失業した場合、失業保険を受給することができません。
- 労働者が労災事故に遭った場合、労災保険給付を受けられない可能性があります。
- 労働基準監督署から是正勧告を受け、加入手続きを怠った場合は、刑事罰の対象となる可能性があります。
雇用主は、労働保険法に基づき、雇用する労働者を雇用保険に加入させる義務があります。
加入手続きを怠らないように注意しましょう。
労働保険事務組合への委託手続きは
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